9月

沖縄への旅に出た。
空港からの移動中、車窓を眺めるとそこはブーゲンビリア、ハイビスカス、ホウオウ木の花の咲き乱れる世界。街路樹はガジュマル、ねむの木、ヤシの木、ホウオウ木、水際にはマングローブ群。私達グリーンを扱う者にとって憧れの「沖縄モノ」がごく普通に植わっている。沖縄の太陽を浴びた花や緑は格別で、本州で花の仕事をしている私はやはり心躍る気分でもあり、なんだか不思議でとても贅沢な感じ!

ようやく着いたホテル。そこには予想通り南の風が通り抜け、ブーゲンビリアのオペラピンク、海の鮮やかな青が美しい水平線が目に飛び込んでくる。ウェルカムドリンクはシークァーサージュース。なんて癒されるシチュエーションなんでしょう。
さぁ、今から思う存分心も体もリラックス開始です!!

夜は波の音を聞きながらテラスで深呼吸。朝は水平線から昇る太陽とキラキラ輝く海、眼下に広がるプールサイドにお行儀よく整列したデッキチェアをぼんやり眺め・・・。自然と心と体が一つになっている感覚がたまらなく気持ちよい。
昼間、海辺を歩くとモンパ※が一列に美しくずーっと遠くまで。こんなに太く大きく枝を張り、密植されているモンパを他ではお目にかかったことはない。しかも実がなっているものを初めて見ることができた。「ははーん、モンパの実はこんなに大きく、一つ一つの小さな実がくっついて、大きな実になるのね・・」。じっくり観察しながら、“うーん、生きている!”と実感。私達が仕入れて本州の室内で育てるとこんな風に光と風のごちそうも充分ではないし、実を付けることはめったにない。本来の植物の成長の姿を実感し、ワクワク大きく躍っていた。

もうひとつ、大好きなのがプルメリアの花。プルっと肉厚・純白で中心が黄色。甘酸っぱい香りが何とも言えず気持ちいい。リゾートホテルやエステの撮影で使いたい花材だけど、なかなか東京・名古屋では出回らない。でもここでは、本物が目の前で咲いている!しかも大きな木に少しの花。なんて贅沢なんでしょう!!

突然のスコール。さっきまで真っ青に輝いていた海も空も、屋根瓦の色も突然色を失い、グレーの世界になった。全て色のトーンが落ちてしまったのだ。20分の激しいスコールが止み、空からサーッと光が差すと、海・空の青も屋根瓦の赤茶色も目に入るもの全てが本来の色を取り戻し、鮮やかで美しい色彩の世界に──。
私はその世界に魅せられた。

花やグリーンの本来自然であるべき姿や、色の迫力に圧倒された旅。
そこにはやはり“青い空”があるからこそなんだと納得。
私も、どんなものでも素敵に変身させ、見る人を魅了するのに必要な“青い空”になりたい!
いつも爽快で、大らかで気持ちよくいたい・・・。
そう思い、秋からの仕事をスタートさせましょ。

※モンパ=沖縄産のペールグリーンの美しい葉の植物、アイボリー基調のインテリアに合わせるととても美しい

フラワーアーティスト垂水圭竹

幼少より茶道・華道を嗜み師範となる。株式会社竹中工務店インテリアセクションを経て、LADAKH flower studioを設立。
花とインテリアの関係に重きをおいたスタイルを得意とし、独特の色彩感覚と審美眼から生まれる花の世界は多くのメディアにも取り上げられる。インテリア・ファッション・ジュエリーなどトップメゾンのフラワーデザイン、企業や個人邸宅のグリーン・フラワーコーディネートなど幅広く手がける。また「花・グリーンのある豊かな暮らし」を提唱したフラワーレッスンも行う。
東京・南青山にアトリエを設け、名古屋・東京を拠点に活動の場を広げる。

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